FXには、レバレッジを利用することで少額の資金から大きな利益を得られるメリットがあります。
しかしレバレッジは使い方次第で借金することにもなる危険性を含んだ仕組みです。
今回の記事では、FXのレバレッジとはどのような仕組みなのかという基本的な知識から、FXで稼ぐためのレバレッジの使い方や考え方、借金してしまう人の代表例と対策についてお伝えします。
これからFXを始める初心者やFXで勝てずに悩んでいる人向けの記事です。
心当たりのある方は最後まで読むことをおすすめします。
FXのレバレッジとは
FX取引のレバレッジとは、少ない自己資金で大きな取引を行えるようになる仕組みです。
国内FXなら、たとえば10万円の自己資金で最大250万円分の通貨ペアを取引できるようになります。
通貨ペアの値動きは大きくても数円から十数円です。一日に数十円の値動きがあることもありますが、非常にまれな状況といえます。
それでも大きな利益を得られるのは、レバレッジによって自己資金以上の取引ができるからです。
FXレバレッジのメリットは少額でFX取引ができること
FXでレバレッジをかけられることにより、少額の自己資金でもFX取引ができるようになります。
レバレッジは大きな利益を得るためではなく、少額の自己資金で取引するために使うものです。
自己資金に対する利益率で考えると同じことですが、トレーダーの意識が大きく変わります。
大きな利益のためのレバレッジ
100万円を入金して、2,500万円分の取引をすれば、一発で大きな利益になるかも・・・!!
少額取引のためのレバレッジ
1万円だけ入金して、25万円分の取引をしよう。リスクを抑えて少しずつ利益を積み重ねていこう。
両者は同様に25倍のレバレッジを利用していますが、考え方が大きく異なり、この違いは必ず結果に表れます。
特に初心者のうちは、少額で取引するためにレバレッジを使ってください。
順調に資金が増えていくとレバレッジをかけなくても十分な利益を得られるようになり、次第に実効レバレッジは低くなっていきます。
FXレバレッジのデメリットは大きな取引ができてしまうこと
レバレッジがあることによって、無理なトレードができてしまいます。
うまくいきそうな気がしているときこそ、落ち着いて少額、小ロットの取引を心がけてください。
うまくトレードできるようになると、ロットを大きくすればもっと稼げると考えてしまいがちです。
そういうときはほぼ確実に失敗します。
自分勝手な思考になっているからです。
そんなときは自分に言い聞かせて、いつもどおりの少額の自己資金、小さなロットに立ち返り、コツコツと利益を積み重ねましょう。
何度も同じ失敗を繰り返しました。自分を責めても解決しません。無理なトレードで一発逆転を狙わず、実力でコツコツと積み重ねてください。実はそれが一番の近道です。
次に、FXの証拠金について解説します。
FX取引するためにいくらの資金が必要なのかを計算するために必要な知識です。
FXの証拠金とは
証拠金とは、FX口座に入金した自己資金のことです。
証拠金に関連するFX用語がたくさんありますので、まずは一通り押さえておきましょう。
FXの必要証拠金と計算方法
FXの必要証拠金とは、取引するために必要な最低額のことです。
必要証拠金は、取引する通貨ペアのレート、取引量(ロット数)、最大レバレッジによって計算されます。
例を挙げましょう。
例1)米ドル円(USD/JPY)1ドル130円、取引量1万通貨、最大レバレッジ25倍
130円 × 1万 ÷ 25 = 52,000円
必要証拠金は、52,000円です。
次に、最大レバレッジ400倍の海外FXの例で計算してみます。
例2)米ドル円1ドル(USD/JPY)130円、取引量1万通貨、最大レバレッジ400倍
130円 × 1万 ÷ 400 = 3,250円
必要証拠金は3,250円です。
最大レバレッジが大きいことにより、用意すべき自己資金がかなり抑えられました。
最後に、ドルストレート通貨ペアの計算方法をやっておきましょう。日本円を交えない通貨ペアの必要証拠金の計算にもUSD/JPYのレートが必要です。
例3)ユーロ米ドル(EUR/USD)1ユーロ1.2ドル、米ドル円(USD/JPY)1ドル130円、取引量1万通貨、最大レバレッジ25倍
(1.2 × 130)× 1万 ÷ 25 = 62,400円
ユーロ米ドル(EUR/USD)の必要証拠金は、ユーロ円(EUR/JPY)のレートを使っても計算できます。ユーロ円のレートが1ユーロ156円の場合、
156 × 1万 ÷ 25 = 62,400円
取引量は、ロット(Lot)で表されることも多いです。1ロットの量はFX会社によって設定が異なるので、気をつけましょう。
海外FXでは、1ロット=10万通貨が基本です。
国内FXでは多くのFX会社が1ロット=1万通貨としています。
FXの有効証拠金と計算方法
FXの有効証拠金とは、FX口座内の証拠金残高に含み損、含み益を加えた金額のことです。計算方法は、非常に単純です。
たとえば5万円入金後にトレードして、5,000円の含み益がある場合、有効証拠金は55,000円となります。
逆に5,000円の含み損がある場合、有効証拠金は45,000円です。
有効証拠金は次に解説する証拠金維持率の計算に使います。
FXの証拠金維持率と計算方法
証拠金維持率とは有効証拠金に対する必要証拠金の割合のことで、%で表されます。
FXの証拠金維持率は強制ロスカットの水準を示す重要な数値であるとともに、安全な資金管理のための指標ともなります。
例を挙げましょう。
例1)FX口座内の証拠金残高10万円、保有中ポジションの必要証拠金50,000円、含み益5,000円
10万5,000円 ÷ 50,000円 × 100 = 210%
この場合、証拠金維持率は210%です。
もう一つ例を挙げます。
例2)FX口座内の証拠金残高10万円、保有中ポジションの必要証拠金5,000円、含み損5,000円
9万5,000円 ÷ 5,000円 × 100 = 1,900%
例1は国内FXでよくあるケース。例2は海外FXでよくあるケースです。
レバレッジが大きいと、必要証拠金が少なく済むため、証拠金維持率に余裕が生まれます。
証拠金維持率が一定の数値を下回ると、強制的に決済されます。
これを強制ロスカットといいます。
次で詳しく解説します。
FX証拠金維持率を計算して強制ロスカットを避ける
FXでは一定の証拠金維持率を下回ると、強制ロスカットという仕組みにより、保有中のポジションが強制的に決済されます。
国内FXの強制ロスカット水準は証拠金維持率100%としている会社が多く、海外FXでは20%としている会社が多いです。
FXの強制ロスカットはトレーダーの損失を限定するための仕組みですが、相場状況に関係なく決済されてしまうため、その後相場が回復して悔しい思いをしたというトレーダーは数え切れません。
ただし、強制ロスカット水準は低く設定している方が大きな損失にも耐えられますが、強制ロスカットされたときには大きな金額を失います。
また、追加の証拠金を入金して強制ロスカットを避ける方法もあり、これが追加証拠金、いわゆる「追証(おいしょう)」です。
どちらにしても、大きな損失に耐えて相場が回復することを願うようなトレードであり、いずれ全額を失う危険な思考といえます。
強制ロスカットではなく、自分で設定したストップロス(損切り)によって、自分のお金を守りましょう。
最大レバレッジと実効レバレッジ
実効レバレッジとは、取引で実際にかけているレバレッジの大きさです。
レバレッジ、証拠金、強制ロスカット、追証と学んできたら、必ず押さえておきたい考え方です。
最大レバレッジと区別して覚えておきましょう。
最大レバレッジ
そのFX会社が提供している最大のレバレッジ。
必ずしも取引において最大レバレッジをかけなければいけないわけではない。
実効レバレッジ
取引において実際にかけているレバレッジ。
実効レバレッジは以下の計算式で表される。
レート × 取引量 ÷ 証拠金
実効レバレッジが小さいほど、余裕のあるトレードといえます。
先ほどの 例で実効レバレッジを考えてみましょう。
例1)米ドル円(USD/JPY)1ドル130円、取引量1万通貨、最大レバレッジ25倍
130円 × 1万 ÷ 25 = 52,000円
このとき、証拠金残高が10万円だとすると、実効レバレッジは以下のようになります。
130円 × 1万 ÷ 10万 = 13倍
証拠金残高が少なくなるほど、最大レバレッジに近づきます。
FXで自己資金以上の損をして借金するパターン4選
基本的に、FX取引による損で借金になってしまうことはありません。
これはすでにお伝えしたように、FXにはロスカットという仕組みがあるためです。
証拠金維持率100%で強制ロスカットされる事が多い国内FXでは、最悪でも必要証拠金分が口座に残ることになります。
ただFXには強制ロスカットが作動しないケースがあり、最悪の場合大きな借金をすることになります。
また、トレーダー自身の勘違いや安易な追証も借金に繋がる可能性がありますので、気をつけましょう。
FXで借金するパターン①フラッシュクラッシュ
フラッシュクラッシュとは短期的な相場の急変動です。
仮想通貨界隈でよく耳にしますが、通貨ペアFXでもフラッシュクラッシュはあります。
フラッシュクラッシュが起きると、損切りの逆指値水準で注文が成立しないうえに、強制ロスカットも遅れ自己資金以上に損をする可能性があります。
フラッシュクラッシュ①-1スイスフランショック
スイスフランショックとは、2015年1月に起きたスイスフランの暴騰です。
スイス中央銀行(SNB)が予告なく、スイスフランのユーロに対する固定相場政策を解除したことにより引き起こされました。
短期間に3,200pipsの変動です。
この暴騰により外国為替市場は大きな混乱に見舞われ、一部のFX会社は破産し、多くのトレーダーが莫大な損失を抱えました。
通常とは異なり、このような相場では設定した損切りラインで約定することはほぼ考えられません。
強制ロスカットもかなり遅れます。
つまり、口座の証拠金以上の損失が発生し、借金しなければならない状況に追い込まれても何らおかしくありません。
フラッシュクラッシュ①-2イギリスブレグジット
ブレグジットは、2016年にイギリスがEUからの離脱を決めたできごとです。
もともとポンドは値動きが大きな通貨ですが、いつにも増して強烈な暴落を引き起こしました。
ブレグジットのようなできごとは離脱が決まる前から世界中で話題になるようなできごとですから、落ち着くまでポンド、ユーロ系の通貨ペアにはタッチしないという対策が可能です。
FXで借金するパターン②週マタギ
FXは土日が休場です。
正確には土曜日の朝6時または7時から月曜日の朝6時または7時まで取引できなくなります。
保有しているポジションは、その間になにが起きても決済できません。
土日に起きたできごとによって、月曜日のオープンと同時に大きな窓(ギャップ)が空いてしまうということがあります。
週末の価格から大きく離れて月曜日がスタートするケースです。
このケースでも損切りの逆指値は機能せず、月曜日のオープンと同時に値がついた価格で決済されます。
結果的に想定していたよりも大きな損をすることになり、場合によっては借金をするほどの損失もありえるでしょう。
週マタギのポジションはこのようなリスクがあることを十分に考慮し、ロットを小さくしたり、週末にはポジションをクローズしたりするといった対応が大切です。
FXで借金するパターン③資金が多ければ勝てるという勘違い
FXでチャート分析に慣れ、ときどき調子良く勝てるようになってくると、勘違いしてしまうトレーダーがいます。
集中してトレードできないのは資金が少ないせいね。もっと資金があれば、集中して良いトレードができるはず!
もっと資金が多ければ、余裕を持ってトレードできる。借金してでも資金を増やすべきだ!
このような考えの人は、証拠金を増やすために、カードローンで借り入れたり、キャッシングで現金を集めたりしてしまいます。
またリボ払いの金利よりもFXの利率のほうが良いなどと言って自分を正当化します。
残念ながら、このような考えは間違いです。
勝てないのは資金が少ないせいではありませんし、資金が多くなればさらに欲をかくようになってしまうため、より多くのお金を失うことになります。
欲に振り回されたら、FXで継続して稼ぐことはできません。
これは管理人の体験談です。
欲を満たすためでもお金を稼ぐためでもなく、トレードを単なる行為として捉えられるようになってくると、勝ち筋が見えてきます。
FXで借金するパターン④追加証拠金
FXで強制ロスカットを避けるために、追加で入金する証拠金を追加証拠金といいます。
未熟なトレーダーは保有しているポジションの含み損がどんどん膨らんでいくと、「そのうち相場は回復する」と現実逃避します。
そのうち相場が回復すると考えているトレーダーは、強制ロスカットを避けるために追加で証拠金を入金します。
最悪の場合、借金してまで入金してしまいます。
FXを長くやっていれば、本当に思惑通りに相場が回復することもあるはずです。
結局プラスで決済できることもあるでしょう。追加証拠金や大きな含み損に耐えた甲斐があったとあったと感じる瞬間です。
しかしいつか、追加証拠金を入れ続けても相場が戻らずにすべてを失ってしまう日が来ます。
その日はそれまで積み重ねた利益も、築き上げた自尊心も、懸命に取り組んだ日々も、すべてを失う日です。
この記事を読んでくださっている読者のみなさんが、そんな日を迎えることなく、順調に成長していくことを願って、記事を書いていきます。
フラッシュクラッシュでも借金しないFX
FXをやる限り、頻度は少ないものの、常にフラッシュクラッシュのリスクはあります。
フラッシュクラッシュが起きても証拠金残高がマイナスにならないFXをご紹介します。
FXで借金しない海外FXのゼロカットシステム
海外FXにはゼロカットシステムという仕組みがあります。
仮にフラッシュクラッシュのような大相場で、損切りや強制ロスカットが遅れても、口座残高がマイナスにならないセーフティネットのような仕組みです。
国内FXでは顧客資金の損失補填が法律で禁止されているため、ゼロカットはできません。
海外FXはハイレバレッジにより少額取引が可能で、ゼロカットシステムがあることで口座残高がマイナスになることはありません。
海外FXは、国内FXよりも安全な取引環境を整えています。
損失を限定するノックアウト・オプション
ノックアウト・オプションはFXに似ていますが厳密にはFXとは異なる金融商品です。
FXではないためレバレッジ規制の対象ではありません。5,000円の入金で1万通貨の取引も可能です。
そのうえ、最大損失がトレード時点で決定しますので、どんなに急変動があってもそれ以上に損をすることがありません。
発注方法や取引の仕組み、価格の見方などが多少FXと異なりますので慣れが必要ですが、損失を限定でき、少額取引から十分な利益を見込める点は大きな魅力です。
現状、日本ではIG証券とFOREX.comの二社のみがノックアウト・オプションを提供しています。
まとめ FX初心者こそレバレッジを上手に活用して少額の証拠金で取引を
今回は、レバレッジと証拠金について解説しました。
- レバレッジは少額取引のために使う
- FXで借金する4パターンを避ける
- ゼロカットかノックアウト・オプションで損失を限定する
文章が多くて疲れてしまったかもしれませんが、ここまでしっかり読んでくださった方にはレバレッジが味方であることを十分に理解していただけたのではないでしょうか。
またFXで借金するパターンを把握することで、最悪の事態を避けることにもつながると思います。
FXではとにかく生き残って、取引を継続することが大切です。
大きな利益を得るのではなく、小さく積み重ねるトレードを続ける意識を大切にしてもらえたら嬉しいです。